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午後4時の手紙 (後編)


中学校生活の中でずっと親しく付き合ってきたサトミちゃんだったけど、
校内のボス的女子N先輩の名前を使って 私を脅すイタズラの手紙を靴に入れられて以来
表面上は変わらずに接していたけど 不信感が芽生えていた。


手紙に使われたノートとペンで サトミちゃんが犯人で間違いないと思ったが念のため聞いてみた。

「□曜日、私の靴箱に手紙入れといてくれた?」
「ううん」サトミちゃんは無表情で答えた。
「そう、誰か私の靴に手紙入れてたんだけど、
後で読もうとポケットに入れて無くしたから。
大事な連絡だと悪いから聞いただけ」

あなたは私を怖がらせようとしたかも知れないけど成功してないよ、を違う言い方で伝えた。


3~4日後
サトミちゃんと一緒に帰ろうとすると先日の手紙と全く同じものが靴の中に入っていた。

もう開けなくても内容は分かっていた
やはり先日と同じものだった。

○子へ
おまえは生意気なんだよ、調子に乗ってると痛い目に合うからな from N

まだやるんだ、、私がビクビクするのを見ないと気が済まないんだね、、、

悲しみに 呆れる気持ちが入り混じり諦めに変わる
もう怒る気にもならなかった。
なんでここまでして私を傷つけてやろうとするのだろう。

一回だけなら悪ノリしてしまったのねと許せる。
でも二回って…確実に嫌な思いをさせてやろうという悪意しかない…
どうして一緒に帰ったり遊んだりしてきた相手にこんなこと思いつくんだろう?

サトミちゃんが「どうしたの」と私の近くに来た。
覗き込むように私の顔を見たあと私が手紙を開いていることも確認する。
そんなに私が怯えるところが見たいわけ?

「N先輩のフリした嫌がらせの手紙だよ、でもN先輩はこんな字じゃないって私知ってる」
サトミちゃんは黙っていた。


次の日その次の日と 手紙について話すべきか随分考えた。
二通目が入れられてから一週間ほど経ったとき 私はサトミちゃんに手紙を書いた。

… こういう理由で悪質な手紙の犯人は分かっている。
サトミちゃんを信用して相談したことが こんな風に意地悪なイタズラに使われてとても悲しい。
あれ以来サトミちゃんに何か話すと また他の子と笑いものにする材料にされそうな気がして、心から笑って話すことができない。
もう今までのように友達として過ごすことはできない。
一緒に帰るのもやめたい
今までありがとうございました、さようなら。 …


翌朝、皆がバタバタと教室に入って行く時間にすれ違いざまに手紙を渡し そそくさと去った。
サトミちゃんがいつものように帰る時間の待ち合わせのことを明るく聞いてくるので 少し胸が痛んだ。
でももう無理、信じられなくなった、ごめん。

帰る時間のことは「そこに書いてあるから」とだけ言ってバイバイした。
それがサトミちゃんと交わした最後の会話だった。




サトミちゃんと全く話さない状態になって10日ほど経過したとき、
学校行事の準備をしていて少し遅くなり一人で廊下を歩いていると
共通の知人が「サトミちゃんから」と私に手紙を渡した。


準備のあとの不要品を外に運び出して、
校舎の裏でひとり手紙を読んだ。
…ごめんなさい、あんな手紙を書いて後悔してる
無理だろうけど元に戻りたい… という内容の長文だった。

私も戻りたいよ、
でももう疑心暗鬼になってしまって今まで通り話せなくなってしまったんだよ
心が狭くてごめん。
一回だけならまだ水に流せた、でもダメ押しの二回目が全て壊してしまったんだよ。


手紙を閉じて 自分たちが過ごす校舎を見上げる。
午後4時の冷たい風がセーラー服の白いスカーフをヒラヒラと揺らした。

装飾を作った後のゴミを焼却炉の四角い穴に放り込んだ。
サトミちゃんからの手紙をもう一度だけ読んで
細かく破ったあと それもゴミと一緒に入れた。

頑張って同じ高校に行こうと話したことや
一緒に映画やプールに行った思い出も 黒い穴に吸い込まれてゆく。

あのまま友達でいたかったよ。

その年は祖母が他界して たくさん泣いた記憶がまだ鮮明だけど
涙の出ない別れもあることを知った。


冷たいかも知れないけど 他にどうすればいいのか私には分からない。


焼却炉の蓋が金属的な音を立ててパタンと閉まったとき、
サトミちゃんと私の友情も終わった。





お読みいただきありがとうございました









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コメント

No title

こんばんは。
悲しい記憶ですね……
でも、小学生ほど子供でもなく、高校生ほど大人でもない中学生の頃ってこういう友達関係のぎくしゃくは昔も今の時代もあるんだろうなって思います。
自分の中学生の記憶でも嫌なことは鮮明に覚えていたりします。楽しかったことより友達関係の嫌な思い出ってなかなか消えませんね。50を過ぎた私でも思い出しますよ。
サトミちゃんはなぜそんな手紙を書いたのかわかりませんが、後で後悔したでしょうね。。。
そういう限度というものもわからない年頃だったかなぁ??
んーー。あとはraffineさんが大人すぎてクールだったのかもしれない。こういうことに。
私みたいなアホな子なら、うん、わかったー。と言いながらまた元に戻るかも。疑心暗鬼はそのままで(笑)

Re: No title

こんにちは😃 体調戻られましたか~?

> 悲しい記憶ですね……
 前にコメントいただいたクミちゃんの件とか、なぜか十代の友人関係は悲しいことが多い…
でもブログのネタにできるくらい逞しくなりました笑

> 自分の中学生の記憶でも嫌なことは鮮明に覚えていたりします。楽しかったことより友達関係の嫌な思い出ってなかなか消えませんね。50を過ぎた私でも思い出しますよ。
 そうなんですよね。いい関係は現役続行中だからあまり振り返ることもないけど、もう会わない相手だから思い返すのかも知れません。
あと過去に想いが行きがちなのは年齢もあるのかも。

> サトミちゃんはなぜそんな手紙を書いたのかわかりませんが、後で後悔したでしょうね。。。
> そういう限度というものもわからない年頃だったかなぁ??
 今でもなぜかよく分からないんですよね~
他人の不幸は蜜の味みたいな気持ちの延長かなとか
この子の感情は自分がコントロールしてるという 自分が上と思いたかった気持ちの延長かなとか。

> んーー。あとはraffineさんが大人すぎてクールだったのかもしれない。こういうことに。
 なるほど、クールと言うのか分からないけど諦めは早いかも…
こっちの気持ちを分かってもらうために悪戦苦闘するよりは関わらないほうを選んでるような…。
だから男性との修羅場もなかったです笑

> 私みたいなアホな子なら、うん、わかったー。と言いながらまた元に戻るかも。疑心暗鬼はそのままで(笑)
 部活とか仕事とか嫌でも顔を合わせる相手なら本音を奥にしまって表面上は笑ってることもできるけど、
素で話せる相手と信じてただけに 形だけでも友達を続けることができなかったんだと思います。

なんで十代の思い出はブログに書きやすいのか考えてみると、今の自分の考え方の源流があるからなんでしょうね。

コメントありがとうございました♪
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