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子供なりに戦った(後編)


準備を全て終えた翌日は朝から快晴だった。
ランドセルを開けて持ち物を確認しながら
O先生の不適切対応を全て書いた自由帳が入っているか確かめる。

私は毎朝仏壇に手を合わせてから登校していたが
その日は家族の無事をお願いした後「上手くいきますように」と付け加えた。


いつもの通り登校していつものように授業を受けた。

O先生は相変わらずだった。
「これ分かる人?」と難しめの質問をして数人が手を挙げても迷わずT田さんをご指名。
T田さんが答えると「T田は本当に賢いな」と口元をゆるめてほめ上げる。

いつもならイラっとするところだけど
今日は やっぱり言うしかないというGOサインに思えた。

給食が終わると、昼休みのドッチボールはパスして教室に残った。
自由帳を読み返す。読み始める前になんて言ったらいいのか考える。


「何読んでんの?」
不意に後ろから声がした。

M橋くんだった。

M橋くんは 今一番気になるのは田中角栄と日中関係というちょっと変わった五年生だったが
誰も思いつかない切れ味鋭いギャグで一目置かれる存在だった。
M橋くんと私はUFOについて語り合うと誰よりも話が弾む間柄だ。

M橋くんなら言っても大丈夫な気がして
「帰りの会でこれを読み上げようと思う」と自由帳を渡した。

M橋くんは真面目な顔をして読んだ後
「Oのやること、なかなかひどいもんな」と言いながらノートを私に返した。

彼は少し考えた後こう言った。
「これ読むの、帰りの会じゃなくて職員室にしたら?
他の先生にも3組の問題を知ってもらう」
「えっ!?怒られないかな、他の先生が止めに来るとか」
「大丈夫、これ事実しか書いてないから。
怒られる理由どこにもない」
「うーん…」
「やりにくいんなら一緒に職員室行ってもいいぞ」
「ホント?だったらそうしようかな」

思いがけず頭脳派の味方ができてがぜん心強くなった。

職員室に行くタイミングを相談していると、近くにいた女子一名と男子一名も一緒に行くと言ってくれた。
不満を感じていた子は実は結構いたのだ。

一緒に下校している隣のクラスのマリちゃんの所に行き
今日は先生と話があるから先に帰っててねと伝えた。


5限6限の授業が終わり、帰りの会が終わり
O先生は廊下の向こうに消えた。
他の五年生の先生たちも職員室に戻ったのを確認して四人が集まる。

緊張しながらもハッキリした声で「行こう」と同行男子が言った。
「止められないように礼儀正しくいこう」と同行女子が言う。
彼女とは以前も同じクラスだったことがあるから
私が短気なのを知ってて さりげなく注意を促してくれたんだろう。

四人で教室を出て無言で歩く。
帰りのざわめきの聞こえる廊下を通りながらお守りのように自由帳をぎゅっと持ち直す。
「失礼します」と言いながら職員室の引き戸を開ける。

O先生は机に向かって印刷物を読んでいたが私たちに気づくと顔を上げて「何か用事か?」と言ってこちらを向いた。
私とM橋くんが先生の前に立ち二人がその後ろにいる形になった。


私は息を吸い込んで少し大きい声で口火を切った。
「O先生にお願いがあるのでここへ来ました。
T田K子さんばかり特別扱いするのをやめてほしいというお願いです。
先生のえこひいきのせいで5年3組全体が嫌な思いをしています」
前後左右の先生の耳にも入る声のボリュームを心掛けた。

「T田さんは 自分は先生に気に入られてるから何をしても許されると思っているのか
校外学習でも班行動を勝手に抜けて仲のいいYさんとどこかに行っていました。
二人は集合時間に遅れたのに謝りもしません、
怒られもしません。そして何も悪くないのに3組の女子全員が注意されました」

O先生はうつ向いた状態で黙って私の話を聞いていた。
4組のおばちゃん先生がO先生のすぐ後ろに来て話を聞き始めた。
斜め前の六年生の先生もこちらを見ている。
提出物などでたまたま職員室にいた他のクラスの生徒も近くにやって来た。

M橋くんが両手を合わせたお願いポーズを皆に向けて
話が終わるまで何も言わないでやってと私に加勢してくれていた。

O先生はうつ向き気味で「先生そんなに不公平なことしてたかな」と呟くように言った。

そうやって気のせいとか気にし過ぎとか言い逃れできないよう こっちは準備してきたのだ。
私は時間をかけて書いた自由帳を広げて読み上げた。

「○月○日 算数で90点以上が三人いたのにT田さんだけをほめる
○月○日 一班全員が掃除をサボったとき一人ずつ名前を呼んで怒られたのにT田さんだけは名指しで怒られることがなかった
○月○日 T田さんが邪魔と言って△△さんを突き飛ばすように廊下を歩くのを見てもO先生は無言
○月○日……」

読み終わって顔を上げるとギャラリーが増えていたのでちょっとビビッたけど
「以上です」と最後までハッキリした声で締めくくった。

O先生はこちらを向いていたけど目は伏せたまま
「そんなにみんなが嫌な思いをしてるとは気がつかなかった、
申し訳なかった」とボソボソした声で言った。

「明日からこんなことのないようお願いします」
私が頭を下げると、一緒に来てくれた三人も一礼した。


失礼しますと出口で伝えて職員室の戸を閉める。
「終わったー!」なぜかみんなで握手し合う。
やり切った感で体が空っぽになった気がしてヘナヘナした歩き方になる。

「みんなついて来てくれてありがとう
 明日私のせいで怒られたらゴメン」
「気にすんな」「私も同じこと思ってたんだし」


昇降口を出るとマリちゃんがウサギ小屋の前で待っていてくれた。
毎日帰り道でその日のことを話す仲 もちろんO先生のことは知っている。
ギャラリーから一部始終を聞いたのか私を見るとニヤっと笑って迎えてくれた。

「決闘終わったの?」

「うん、勝ったのか負けたのかまだ分からないけどね」

暴力も悪口も使わない
えんぴつ一本だけで戦った決闘が終わった。

 

翌日、朝の会でO先生は連絡事項を伝えたあと
「自分でも気付かないまま不公平なことをしていたようなので これから気を付けたいと思う」と淡々とした感じで言った。

体育の始まる前、女子だけになったとき
T田さんとYさんは班行動しなかったことをみんなに謝った。

役員に立候補したりしない地味生徒なのに職員室をざわつかせてしまった私のことを、
M橋くんはふざけて「黒幕」と呼んだ。


ひいきのない5年3組になって数日が過ぎた頃、
家に帰ると母親が
「○子 職員室で何をしたのよ?」と不安そうに尋ねてきた。
同級生のお母さんにでも聞いたんだろう。

私は自由帳を見せて
「間違ってないでしょ?ケンカしに行ったんじゃないって分かってくれた?」と言った。

「間違ってはいないけど…
こんな性格でお嫁さんにもらってくれる人がいるのか心配だわ」
と学校生活に全く関係のないことを言い出す母。

心配するとこズレてるよお母さん…という気持ちと
怒られずに済んで良かったという気持ちで力が抜けた。


この件で私たちに注意をする人は先生にも保護者にもいなかった。

職員室に乗り込むのは向こう見ずな行動だったかも知れないけど
子供なりに一生懸命訴えたことを抑えつけたりせず耳を傾けてくれる、
周りにいるのがそういう大人だったのは幸せなことだったと思う。





お読みいただきありがとうございました

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十代の日曜日


子供を模試の会場まで送る。
車の少ない休日の朝、澄んだ空気が心地よい。
犬の散歩の人以外は十代の子ばかりが通り過ぎていく。

同じく模試に行くらしい真剣な顔つきの学生
屈託のない笑顔のオシャレした女の子ふたり
スポーツバッグと大きな水筒を持って走っていくジャージの男の子

どんなことも吸収して貴重な経験になる年齢
行く場所は様々だけど、今日見たことが大人になる彼らを形作るピースのひとつになるんだろうな。

十代の時のことって大きなイベントでなくても
不思議なくらいずっと覚えている。


高校生のとき
ハンバーガーを食べて友達の誕生日を祝った後
どうでもいいことを話しながら歩いて
知らない道に入ってみたら雰囲気のある階段と無人駅があった。

夕陽が照らすホームの寂寥感が映画に出てくる所みたいだった。
駅は思ったより高い場所で いつも通学で通る町が遠く小さく見えたせいで、私たちは今からここを離れて遠くの街へ行くような錯覚に陥った。

「旅立ちのシーンみたいなやつ撮ろうか」
哀愁漂う表情を作ったり格好つけたポーズを取ったりして、
笑いながら使い捨てカメラのシャッターを切って
たくさん写真を撮った。

大人になって もっとお金を使う誕生会もあったけど
あんなに大笑いすることは もうなかった気がする。


名前も知らないティーンエイジャーに心の中で行ってらっしゃいと伝える。
楽しんで
わくわくすることも緊張することも
きっと未来の自分を作る糧になるから。

夕暮れを見る時間になる頃、
彼らが いい一日だったと感じながら帰り道を歩いていますように。






子供なりに戦った(中編)


 <前編まとめ>
五年三組の担任O先生… アラサー独身男 いつもジャージ 授業は普通
T田K子… 成績も運動神経もルックスも良く先生にあからさまに贔屓される女子

自分は何をしても怒られないことを認識し 身勝手な言動をし出すT田さん。
とうとう班を無視した自由行動までして女子の我慢も限界、クラス内に寒風が吹き始める。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

先生に不満があっても 親に言ったところで解決にならないのは分かっていた。
問題のある先生のニュースが日常的に報道される現在と違って
先生はエライ人 多少何かあってもこちらが我慢して波風立てないように…
というのが当時の一般的な考え方だった。

自由帳に書き込みながら私は思っていた。
こんなのおかしい 腹が立つと感情を訴えたところで気にし過ぎと言われたら終わりだ。
サトルくんのように学級委員のくせに「褒められない者のヒガミ?」なんてズレた解釈をするヤツだっている。

感情より事実。
とにかく実際に起こったことを並べていこう。
あったなかった・言った言わないで話が進まないのは嫌だ。
誰が見てもこれは改善すべき状態だとすぐ分かるよう
これまでの経過を客観的に具体的に書くしかない。

家に帰って続きを書いた後、自分の日記を見て記憶に間違いないか確かめた。
その頃ほぼ毎日 日記をつけていてO先生の露骨な態度の違いについても書いてあったのだ。


1日の終わりのホームルーム「帰りの会」で
気がついたことを挙手して言う時間がある。
音楽室に移動するとき男子たちが走っていて危ないと思いました などと伝えて注意を促す。


私は、その時にこれを読むと決めた。
誰にも相談しなかった。
誰かを巻き込んでその子まで怒られたら申し訳ない。

私ひとりでO先生と対峙するのだ。




お読みいただきありがとうございます
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御即位


即位の礼を見る。
とても神聖で厳かな雰囲気で こちらも思わず姿勢を正す。

平安時代さながらの装束や調度品は 色彩の豊かさと重厚さを併せ持つ美しさ。
世界最古の王朝が育んできた格調高い文化を
家にいながら目にすることができる幸せ。


こんな王朝絵巻のような式典が
博物館の展示でも映画など架空の世界でもなく、
今を生きる人のセレモニーとして奇跡のように存在している。
日本という国が特別であることを改めて感じる。

世界各国から駆けつけた王族や元首、来賓の豪華さにも驚いたけど
ニュースで関係悪化が報じられる国と国が同じお祝いの席にいることに なおさら光を感じる。

皇室が権力から距離を置き、国家の康寧と世界平和を祈る存在だから可能なことなんだろう。


 敬意と祈りと千年の美意識が凝縮された儀式。

長い長い年月を繋いで 伝統が現在も生きていることに静かに感動した。

令和の日本が安寧でありますように。

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子供なりに戦った (前編)


先生に向かないというより人間としてダメでしょ…
と言いたくなるようなニュースが多くて、子供の心への影響が心配になる。


昨今のニュースに比べると、被害と呼ぶほどのものはないけど
それはちょっとおかしいと思うような先生に遭遇したことは何度かある。

小学校五年生の時の担任 O先生もその一人だ。
三十才位で体育教師でもないのにいつもジャージを着ている 特に明るくも暗くもない男性教員。

授業の進め方も可もなく不可もなくというところだけど、一人の女の子を露骨に贔屓していた。

先生お気に入りの女子 T田K子ちゃんは成績優秀で運動神経も良く、色白ぱっちり目で顔面偏差値も高い。👩
お父さんが教師だけあって授業中にしゃべったりすることもない。

これだけ揃ってたら可愛いがりたくもなるだろうけど、他の児童にしてみれば愉快なものではない。

「今回のテストは難しかったのにT田は92点も取れてるな、よく勉強してる えらいぞ」
90点以上の子 あと二人いるんだけど…
しかも隣の○○ちゃん95点でT田さんより上なんだけど。
…という感じのことを2日に一回くらいやっていた。

T田さんも自分は特別扱いされてるという意識で俺様感が漂う言動が出始めた。
ついに校外学習のとき、班行動をするのを勝手に抜け 仲良しのYちゃんと二人で行動。
集合時間に遅れても申し訳なさそうな様子は少しもなくT田さんとYちゃんは現れた。

ゴメンの一言もないなんてね…
この辺りから女子全体がT田&Y子に対して冷淡になった。😔
それぞれの心の中にあった不満が表面化してきたのだ。


それを察した学級委員のサトルくんが 私と近くの○○ちゃんに話しかけた。
「最近 女子ってT田たちに冷たくない?
もしかしてT田がカワイイから?」

私と○○ちゃんは思わず顔を見合わせた。
無言でもお互いが思ってることがハッキリと分かった
“男子ってバカだね”

「サトルくん、しっかりしてるようで意外とつまんない人だったんだね」
(男子は成人してもこういう傾向がある気がする)

え…? 意味が分からないらしいサトルくんはもう放っておいて、
私は自由帳を取り出すと考えていたことを書き始めた。

このままではいかん。
無力な五年生なりに考えた打開策だった。

(続く)



お読みいただきありがとうございます😃
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何回あるのか


空気が冷たさを帯びてきたのでセーターを買いに行く。

割りと広い店舗で 25~30歳の女性二人と男性一人がいる。
3人ともアパレルのスタッフらしく垢抜けている。

なのに何故かひとりの女性にばかり目が行く。
「いらっしゃいませ」と言いながら服をたたむ。
みんな同じことをしてるのに彼女の周りだけ明るい。

試着しようかなと考えてる私に気がついて彼女が接客してくれた。
近くで見ても内側からキラキラが溢れるような笑顔。

星が雫になったような綺麗な指輪をしていたので
思わず「素敵な指輪ですね~オシャレ系のものですかマリッジ系のものですか?」と尋ねて
彼女がもうすぐ結婚することを知った。

会ったばかりの人なのに、わぁ良かったねとこちらまで喜ばしい気持ちにさせる空気。
これが幸せオーラってやつか…
自分の結婚前はどんな感じだったか昔過ぎて思い出せない(笑)



知人に 学生時代から絵が好きだった年上の女性がいる。
息子さんが自立してから本格的に創作活動に力を入れ
数年前 念願の個展を開いた。

普段は普通の主婦という感じの人だけど
個展のオープニングに着物姿で現れた彼女もそうだったなと思い出す。

着物が醸し出す華やかさに 幸福感とかやり遂げた自信のようなものが加わって、ちょっと違う世界の人みたいだった。


自分はオーラが出てたことなんてあるのかな?
この先 オーラが出てると思われることってあるのかな…。

有名人とは生活の異なる普通の勤め人や主婦って
そんなふうに思われることが人生で何回あるんだろう。


ときどき甘口


学園ドラマに置き換えるなら、自分は敵役になるキャラなんだろうと思う。
清楚で健気なヒロインと同じ男子を好きになって
「あなたなんかの出る幕じゃないわよ
○○くんにふさわしいのはワタシよ!」とやる人系の外見。
(出る幕じゃないってフレーズ 実生活で使う人見たことないけど)

幼い頃「魔女っ子メグちゃん」(古い…)というアニメを見ていても、メグよりもクールなノンにシンパシーを感じていた筋金入りの無糖派だ。


そんな感じなので 女性にしか着られないフェミニンとかラブリーとかいった服とは距離を置いてきた。
花柄とかフリフリとかの甘いものを着ると我ながら女装?と思ってしまい十代終わりから購入は避けてきた。

でも一応女子なのでローラ・アシュレイとかスイートな世界を見ると割とわくわくするし、
可愛いものを手元に置いたり身に付けたりしたい願望はある。

好きだけど似合わない
好きでも 似合わないものを着るのは居心地が悪い


仕方がないのでお花などはアクセサリーで取り入れる、
でもそれだけでは満たされないのか 容器がかわいいというだけの理由でお菓子を買ってしまう。

バレンタインに家族にチョコレートを買って渡しても
「入れ物は私にちょうだい」と伝える。
それは贈り物というのか?って気もするけど
家族は私の癖を知ってるので「はいはい」と笑って応じてくれる。


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想い出クラッシャー


インスタグラムを始めたばかりの頃の話
(今はやってない)

好きなバンドとか好きな洋服屋さんとか海外のインテリア雑誌とか 気になるものを一通りフォローして眺めた後、
そうだ あの美容院は今も変わらずやってるかな?と気になった。

友人のIちゃんと私が独身の時お世話になっていた美容院だ。

オシャレな雰囲気でBGMもエッジの効いた音楽を使っていて
オーナーは海外のヘアカットのコンテストでも優勝した凄腕。

そのオーナー Eさんがなかなか雰囲気のあるカッコいい人だった。
最近人気だったドラマ「凪のお暇」のゴンさんみたいな感じ、服装はゴンさんとは違ってTシャツでも爽やか系。

接客も上手で お世辞を言うわけじゃないのにこちらの気分が上がる会話の巧者。

二人でよく「カッコいいよね♪」「でも奥さんいるんだよねー」と話していた。

友人Iちゃんは特にEさんのことが大好きで
サロンに行った翌日はウキウキでEさんの話をして
「別に夫婦仲に波風立てるつもりはないけど
バレンタインチョコくらい渡してもいいよね?」なんて言うくらいだった。


二人とも十年以上行ってないなぁ、今もあるかな。
お店の名前で検索してみると店舗の写真が出てきた。
支店も出して経営は順調のようだけどスタッフの顔が分からない。

次に薄らいでいた記憶の中からEさんのフルネームを思い出して検索。
あったー!!



……… これ Eさん?……だよね…

ちょっ 待てよ! (キムタク風)
マジっすか!? (シューイチ中丸くん風)

Eさん、いったい何キロ増えたの?
顔の輪郭が恵比寿さんとか大黒天とかの七福神メンバーになってるんだけど
イケメンカリスマ美容師はどこに行ったの?
誰でも年は取るけど
これは おじさんと言うよりオッサンだよー
(自分の加齢は棚に上げて問題発言)

見なきゃ良かった。
見なければ美しい思い出のままだったのに…。

しかもEさん 神社近くの滝に打たれたり
浄化された特別な水の話をしたり
スピリチュアル系っていうの?
なんか異世界の人になってるしー

Eさんの話で盛り上がれる相手はIちゃんだけだが
ギャップが衝撃過ぎて今も話せないままでいる。


SNSっていいこともあるけど
こうやって保存され美化されてた記憶が崩壊してしまうこともあるんだな。
自分は顔出しなんかしてなくて良かった~
崩れると困るようないいイメージなんて過去にも現在にもないけど。





地位もお金も手にした後に


ご近所にSさんという一人暮らしの女性がいる。

ほっそりした80代の方でいつも身綺麗にして
落ち着いた色だけど地味ではない服を着て品のいい薄化粧をしている。
早朝ゴミを出す時でさえ 部屋着や髪の寝癖なんてものとは無縁。

Sさんはナントカ学園という幼稚園や学校を運営するところで仕事していたとかで
園長をしたりその他偉い役職についたり立派な経歴をお持ちの女性らしい。
教育に人生を捧げてこられたようで結婚は一度もしていないという。


Sさんは一人だけど 家族用の広さの賃貸でない住まいに暮らし、
杖は使っていたけど どこか不自由という感じもなく
駅に向かって歩いていくのをよく見かけた。

隙なく整えられた後ろ姿からも Sさんが経済的に余裕があることや自分を律して生きてこられたのが伝わった。
(ラクな方に流れて生きてきた私とは大違いである)

2~3年前 Sさんの家で少し物騒なことがあった時、
ウチが周辺のまとめ役を務めていたため話を聞いたのがきっかけで
たまに挨拶以上の話も少しした。

私は「あの閉店したお店のあと コインランドリーになるみたいですね」とか当たり障りのないことを言うくらいだったが
Sさんは自分の教え子たちは現在どれだけ立派になっているか 自分がどれだけ必要とされてきたか、自分の現役時代の功績の話をよくしていた。

しかし、あるとき転倒による怪我をして
退院してからSさんのしっかりした感じが何割か減った。
認知というのでもないが 前ほど目に力がないように思えた。


ある冬の夜のことだった。🌙
突然うちのチャイムがピンポンピンポンと鳴った。
深夜2時 辺りは静まりかえっていて私も子供も熟睡していた。
夫は出張のため不在で 私は何事かと緊張しながらインターホンを取った。

「Sです!開けてください」
「お願いします。今からうちに来てください!」
正直応じるのは気が重いが玄関先で呼び続けられても困るので話を聞いた。

緊急時に○○センターに繋がる非常ボタンにうっかり当たってしまった。
誤作動でブザーが鳴り続けているので何とかしてほしい。

ブザーがうるさい??
お困りなのは分かったけど…
火事でも賊が現れたわけでもないのに他人の家のチャイムを深夜に鳴らして叩き起こすって…。

寝間着にガウン姿のSさんはお隣まで起きてしまいそうな声で「お願いします!」を連発するので、
起こされ寝ぼけ顔で玄関まで来た子供に事情を話してSさんの家に行った。

家の中はキチンとしていた。
壁に固定してあったらしい弁当箱サイズのブザーが床に落ちていた。
けたたましく鳴り響くブザーを止めて、
○○センターに「ブザーが鳴ったのは間違いです」と連絡した。

Sさんはいざという時頼める人がいないから私の所に来たのに
心から寄り添うことができない私って冷たいんだろうか?

音が鳴り止むとSさんは「止めたついでにコレを壁に戻してもらえますか?」と言った。
申し訳ないけど、頼めば何でも言うことを聞いてくれる人と思われたくなかった。
また深夜にチャイムを鳴らされても困ると思った。

感じ悪いと思われてもいい、私はキッパリと言った
「できません」
「こちらにも生活があります。
こういうのはもう最後にしてもらえますか?」

Sさんは自分が頼り過ぎたと感じたのか
いくつか積み重ねられた贈答品の箱のひとつを手にして「これを持っていって」と言った。

食品の詰め合わせなんかより、こんな時間に申し訳なかったという言葉じゃないの?
「いえ結構です」
私は逃げるようにドアを開けてSさんの家から外に出た。

自分の母親だって80代の高齢者だし、
助けたい気持ちがないわけじゃない
だけど、だけど。


何日かして別のご近所さんにそのことを話すと
「私もあったのよ」と言う。
杖をベッドの下に落としてしまって拾えないから来てほしいとSさんに言われた。
ベッドの下にあった杖を拾いながら思わず「隅っこ結構ホコリがたまってますね」と言ったら
じゃあついでに掃除してと言うのよ、
こっちだってこれから仕事だし 身内でもないのにそこまでするのはおかしいでしょ?
何かお世話になった関係でもないんだし。

Sさんの身内は姉とその娘だけだが
ここから離れた町で暮らしているし 姉は現在施設に入っているらしい。

十分なお金と快適な住まいがあっても それだけでは足りないのだ、
年を取ってくると。


私が子供の頃と違って現在は結婚をしない大人の女性も増えている。
他人に気を使ったりすることなく自由でいたい、
お金や時間を自分のためだけに使いたいというのも分からなくはない。


私の実家の辺りは 地域で催しをしたり共用場所の清掃活動をするなど普段から交流があり、
一人暮らしの人が姿を見せないと誰かが様子を見に行くのが自然だったけど
最近はそういう所は減ってきている。

高齢者だけの家庭でも通学路の見守りなどで若い世帯と繋がりがある地区もある一方で、
町内会の諸々が煩わしくてイヤ 近所づき合いなんてしたくないという人も増えているようだ。


結婚生活も地域の付き合いも避けて暮らすということは
何かあったとき頼れる関係を作らないということでもある。

自由で気楽な暮らしと引き換えにやってくるものを見た思いがした。

とは言え結婚しても 離別も死別も巣立ちもある。

避難が必要なレベルの自然災害も年々増えている。

一人の生活になったとき何かあったら まずどこに連絡を取るのか?
そういうことも考えておかなければいけない…と思わされた一件だった。





















ノーベル賞と未来の日本


吉野彰先生 ノーベル賞おめでとうございます✨

日本中が幸せな熱気に包まれたニュース。
毎日当たり前のように使ってるスマホも こうして何十年という研究を経て 大勢の人の苦労があって
自分たちの手元にくるんだなとしみじみする。

何日か前、NHKの番組でもシワ改善化粧品の開発に15年かかったという研究者の女性の話をしていて、
こんな風に ひとつの課題に膨大な時間をかけて取り組むことができる理系の人って凄いなぁと尊敬するばかり。


吉野先生は凄い経歴や業績があるのに 気さくで周りを明るくする人柄なのも素敵だなと思う。

笑顔のチャーミングな方だなと思っていたら、奥様も暖かい人柄が伝わる笑顔の方で ご家族の仲の良さが窺えた。

賞金の使い道について尋ねられた時、
若い研究者を育てるためにというお話をされていて、
やはりそれを案じてみえるのかと思った。


政府が外国にはやたらお金をバラまいてるのに
日本の大学に使うお金は削っているのが本当に納得いかない。☹️

今は大抵の機関に意見を受け付ける窓口がネットにあるから
自分も気になることがあったら声を届けているけど、
やはり実績のある人が声にするのとでは全然違う。


ノーベル賞受賞の先生方で政府に申し入れしてほしいな。
「なぜ私たちが拓いた道に続いてくれる若者を育てることにお金を使わないのか」と。


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ノーベル賞のニュースと直接関係ある大学ではないけど、こんな状態では若い研究者が育たない…

これでは未来の日本は ノーベル賞を受賞するような科学者のいない国になってしまう。

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