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対比と想像力


「ヴィンランド・サガ」というマンガがめちゃ面白いと息子が言うのでネットで検索してみる。
簡単に言ってしまうと、ヴァイキングの一族に生まれた少年トルフィンの戦いと成長の物語なんだけど なかなか面白そうなので書店に買いに行く。

その隣に「ランウェイで笑って」というコミックもあり、どちらも十巻以上ありアニメ化もされたりして書店のイチオシのようで 取りあえず両方二巻ずつ購入


こういう時「知らない作者だしハズレだったら損だな~」とかあまり考えず割とパッと買う。

昔から知ってる作者とか 自分の年齢をターゲットにしたものを読んでれば楽だし間違いないけど、
それだけだと何か退屈な人になってしまう気がする。


両方面白かったので買って良かった♪

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持ってるのと同じ色だ~と思って置いてみただけ(笑)

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身長158㎝なのに 170~180㎝が普通のショーモデルを目指す千雪と
洋服作りの才能があるのに家が貧乏で服飾専門学校に行けないままデザイナーの元で仕事する育人


モデルとか芸能界を目指す女の子の話は珍しくないけど このマンガは、
父親がモデル事務所を運営していて環境には恵まれてるけど才能(身長)には恵まれない千雪と
服を作る才能はあるけど環境(家庭の貧窮)に恵まれない育人を並走させているところが良かった。


大抵の人は年齢と共に自分を客観視できるようになってくる。
踏み外すこともないけど、無謀な挑戦もしないということだ。
若い時からそういう傾向のあった自分は
彼らのように 向こう見ずになれる才能がとても眩しく見えた。



ヴィンランド・サガの主人公の父親であるトールズと
トールズを死に追いやるアシェラッドは
同じ百戦錬磨の戦士で頼られる存在でありながら生き方が全く違う。

家族や故郷に対して思いがあるのは二人とも同じだけど
あるとき戦いに明け暮れる生活が嫌になり静かに暮らしていたトールズと、戦い続けるアシェラッドとの生き方の違いが対照的だった。


古くは 剣豪宮本武蔵と佐々木小次郎
昭和マンガではガラスの仮面の北島マヤと姫川亜弓 
BAKUMANの真城と新妻エイジ
(佐藤健主演で映画化もされたマンガ家の物語)


並外れた才能や集中力を持っているけど、力の見せ方は違う二人がいることで
それぞれのの個性が際立ち、自分はこっちを応援したくなる…と読者を引き込む。

この二人が揃って出てくるのは序盤のみですが
呼吸まで聞こえてきそうな圧巻の対決だった
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美術工芸でも風神・雷神の屏風があるように
似て異なるものを対比させることで物語に奥行きを出すのは、日本人の得意とするところかも知れない

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こういう描き方って海外の美術館ではほとんど見ないけど私は好きだな~
一人じゃなくて一対だからより動きのある印象になっていると思う。



お読みいただき ありがとうございました
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美女の正体


写真家 下村一喜氏が語る美女の話。

彼の名前は知らなくても彼の写真を見たことがない人はいないと思う。

女性ファッション誌の表紙
(日本のみならずフランスでも)
浜崎あゆみのジャケ写、ビヨンセ出演のCM、宝塚 等々
トップクラスの美女たちを撮り続けてきた写真家。

磨かれた審美眼に基づいた 写真家としての確固たる方向性を語りつつ、
『コンプレックスがあって それを補うために頑張ることを知っていることは人として魅力的』
と美人を目指す女性を応援してくれる。


後藤久美子さんや宮沢りえさんとは仕事を越えた交流をお持ちで その辺りのエピソードや考察も興味深かった。

美人=バラ色の人生と思いがちだけど、
色々なものを背負ってしまう苦しさも経験し 結婚してようやくなりたかった自分になれたと話す後藤久美子さん。
(しかし美し過ぎて人生しんどいって凡人には一生想像つかない悩み…)

モノクロ映画時代の女優のようなクラシカルな美しさを基盤にする下村氏に宮沢りえさんが
「下村さんは様式美が好きなのね?でもナチュラルな表現も素敵よ」と話す件で、
健康的美少女だった宮沢りえさんも知性と深みを持つ大人の女性になられたんだなぁと思った。
相手のスタイルを尊重しつつ 短い言葉でサラリと新しいことを提案できるなんて素敵。

『美しい人には必ず知性がある』
『勝ち残れるのは他人と比較されない何かを見つけた人』
もうこんな年だしラクに生きたいわ~と弛みがちな年頃の女性に
心地よい緊張感をくれる言葉が多くて いい刺激になる。

もう割と大きい子供もいるんだし 今さら美人とか不美人とかどうでもいいという考え方もあるけど
自分も思ってしまうことがあるけれど。

どうせおばあちゃんになるのなら、
若い人に「年を取るのもそんなに悪いことでもなさそうだ」と思われる人になりたい
だから私は本棚の見やすい場所に ずっとこれを置いている。


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下村氏の撮るファッション写真は
ノーブルな中に彼にしか出せない立体感や躍動感があって、不思議と惹かれるものがあった。


親近感やフンワリ可愛いがトレンドになっても
「住む世界が違う人」と感じさせる 格のある美しさを追及するブレなさ、
何のツテもなく一人でパリに渡って道を切り開いたエネルギッシュな生き方。

撮影の内側など特に興味のない人が読んでも、きっと心に響くエピソードがあるはず。

『美しくないと自分で思い込んでいる人を撮る時は 美しく撮りたい。
その人がまだ気付いてない美しさを写真に撮って見せてあげたい』
彼が多くの女優の信頼を得てトップランナーであり続ける理由はここなのかと思った。
自分だけの哲学と技術と、そしてやっぱり愛情。



この本の感想をSNSで上げたら、下村氏本人から
「本当にありがとう 光栄です」というレスが来て手が震えるほど驚いた経験がある。
(写真はその時 私が所有品を使って撮ったもの📱)


超一流の人って どんな凄いレベルの仕事をするようになっても 自分の仕事に寄せられた感想に真摯に耳を傾けるものなのか
こんな一般人の自分の声まで拾い上げてくれるのか…と感激したのを今も覚えている。















シンプルな動機


ネット系の起業に各種アドバイザーやカウンセラーがある。
友人の友人にもそういう女性がいて、SNSの閲覧者を増やすためのアドバイスをしているという。

お友達価格でできるよと持ちかけられたが、今のところ必要ないと伝えた。
国家資格でもない自称講師で 代金が何千円から十数万円まである こういう業種の適正価格のなさも理解出来ないし 💴😀

閲覧者の数と収益が関係しているようなブログや
お店のPRのためのSNSなら、そういう集客のための戦略もいるだろうけど
自分の場合、書くのが好きでやっているだけだから あまり関係がない。

リアルで言えないことを書きたくてブログをしているわけで、
「こういう記事はウケが悪いからやめてこういう風にした方がいい」等と言われたらブログを始めた意味がなくなる。
なぜそう感じたのか 自分の気持ちを掘り下げているうちに分かってくることもある。

最初に書いたものを読むと ひどいなこれと削除したくなるけど
今も方向性が定まってないけど、
駄目なところとか試行錯誤の経過も含めて自分だから これでいいような気がする。

そんなふうに思ってたら
『読みたいことを書けばいい。』という本に出会った。📖

著者の田中泰延氏は大手広告会社で20年以上コピーライターをしてきただけあって文章が短く的確。
書くときの心の持ち方について伝えているけど
人の心に訴える言葉と広告作りの流れの話も興味深かった。

広告業界出身でwebでのコラムが人気と聞くと 広く浅くというイメージを持ってしまうけど、
実在した人物について書く時は図書館で調べることがどれだけ重要か説くなど 見えない基礎部分も大切にしていることが分かる。

「書く対象への敬意と愛情がなければ伝わらない」には100%同意。


こちらを訪問してくださる方もブログを運営してみえる方が多いけど
(いつもお読みいただき ありがとうございます)
何かを書いてる人にはきっと「分かる 分かるよー」と赤べこのように頷いてしまう件も多いはずだ。

私も“うん、やっぱり自分の心から湧いてきた言葉でいいんだ” と意を強くした。

私の好きな章はこんな言葉で締め括られている。

「あなたは世界のどこかに小さな穴を掘るように
小さな旗を立てるように書けばいい。
すると 誰かがいつか そこを通る」




















マンガ家の人生


ヤマザキマリさんの著書「仕事にしばられない生き方」を読む。

ヤマザキさんは 阿部寛さん主演の大ヒット映画
「テルマエ・ロマエ」の原作も描いている人気のマンガ家だ。

ビジネス書のようなタイトルだけど、何かを見つけると損得など考えず飛び込んでいくヤマザキさんの生き様が濃くて波乱万丈で
これもぜひマンガにしてくださいと言いたくなる一冊だった。

1967年東京生まれ北海道育ちと聞いて自分とそんなに変わらない環境で育ったのかと思ったが、
仕事や生き方に関する考え方は自分と全然違って面白かった。

私の周りにいるのは普通に会社員や公務員をやっている大人ばかりだったし、 
親戚に有名な芸大を卒業した人はいるけど 結局芸術では生計を立てることはできず普通の仕事をしていた。

だから「仕事にしたいくらい好きなことがあっても、定収入を得られる見込みが薄いなら趣味に留めておいて堅実な仕事につくべき」
というのが自分の基本的な考え方だった。

しかしヤマザキさんは「好きなことをできない人生なんて意味がない」という考え方が一貫している。

これだというものを見つけたら どれだけのお金になるかなんて気にせず全力でそれをやる。
(ヤマザキさんにとっては絵を描くこと)
自分にとって大切なことを中心にして生きてたら貧乏だって楽しめる、という軸がブレることがない。

これはヴィオラ奏者の母親(シングルマザー)の影響が大きいようで
母親は惚れ込んだ楽器があると その後食費に困ることが分かっていても買ってしまうような人だったらしい。

ヤマザキさんはイタリアまで行って絵の勉強をするものの
絵描きとして食べていくことができない状態が十年以上続いた。🎨

似顔絵描きや土産物売りなどをする生活が続いたら
大抵の人は「もう毎月給料がもらえる仕事に就こう」と思うだろうがヤマザキさんはそういう選択をしなかった。

そしてマンガを描くという 絵描きではないが絵を描く仕事に出会い、
手探りで創作を続け 新人漫画賞に応募して評価を得てゆく。
子供に十分な教育も受けさせられる収入も得るようになる。

絵描き→マンガ家という転換ができたのも、ヤマザキさんの持つものが絵のスキルだけではなく、
文学などの幅広い教養や母親が尊重してくれた自由な発想があったからだろう。

ヤマザキさんはイタリアに来たばかりの頃、ジュゼッペという売れない詩人と大恋愛をしている。
働かず借金ばかりしてヤマザキさんのお金で詩集を自費出版するような、いわゆる「だめんず」だ。

読んでいると「こんなダメな男 早く別れなよー」という気分になる。

だけど古典レベルの小説など、ストーリー作りに必要な教養をヤマザキさんに授けたのもジュゼッペ。
人生なにがプラスになるか分からないものだ。


それにしても、
映画の興行収入が59億円でヤマザキさんに支払われた原作料は100万円だけ…というのにはビックリした。💴

ヤマザキさんは周りから勝手に大金持ちになったと思われ 心ないことを言われたり精神的疲労が大きかったので
正直に受け取った金額を言ったら、今度は「日本の出版・映画業界を批判してるのか!」とバッシングを受けたという。

人気が出たら出たで別の悩みがやってくる。

売れっ子になったからハッピーエンドとはいかないけれど
そんなことで創作意欲が損なわれることはない。

心から好きなものに出会った人って最強だと思う。














憧れの形


「私、○歳になった今も綺麗って言われるんです」とアピールしたがる女性は少なくない。
今は誰もがSNSでそれを表現できるようになった。

いくつになっても憧憬の眼差しで見られたいと思うのは悪いことではないと思う。
承認欲求や自己顕示欲は厄介者扱いされがちだけど
自分の押し売りではなく 外見や内面を磨く動機に変えるならプラス要素になる。

ただ 視線を集めるためにキレイや可愛いを増やそうとしても年齢と共にそれは難しくなる。
頑張りの方向性を間違えるとイタいとまで言われる。

だけど濃い時間を過ごしながら年齢を重ねた人にしか出せないオーラで惹き付ける場合もある。

山田詠美さんがエッセイで書いていた、塩野七生さんとイタリアのレストランで会った話が印象的だった。

レストランのウェイターたちは塩野さんが高名な作家であることは知らなくても すぐに只者ではないことを見抜いて
まるでナイトが女王陛下に仕えるように接していたという。

きっと芸能人などとは違う 塩野さんしか纏うことのできない迫力があったのだろう。
独自の美意識を持つ山田詠美さんもそのカッコよさにはいたく魅了されたようで、文章のわくわく感からもそれが伝わってきた。

80歳を迎えても こんな風に憧れの存在として見られる塩野さんて素敵だなと思った。

著書の写真やニュース番組で拝見しても、イタリア在住の方らしく 鮮やかな色や大ぶりのジュエリーの使い方もこなれていてエレガント。
これに政財界の面々が唸るほどの知性が加わるのだから、そりゃ只者でない雰囲気も出るだろう。


塩野さんの著書は何冊か持っているが、私が一番好きなのは
「チェーザレボルジア あるいは優雅なる冷酷」である。
このタイトルのセンスだけでも痺れる。

野心家で頭が良くて周囲を圧倒するほどのイケメン、
怯むことなく戦場を駆け抜け 冷酷な指揮官にもなるけど妹には甘いという 実在した魅力的な貴族の話を時間を忘れて読んだ。

読み終わってから、この本の刊行が1970年と知った。
年月を経ても目減りすることがない魅力を持つのは 作者のみならず作品もだった。